「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?

いざ皇宮へ

「このことです。これは……?」

 彼女は、紙片をヒラヒラさせた。
 藁人形に握らせておいた紙片である。

「どうせカールはちょっとした食事にさえ連れて行ってくれないんでしょう? だから、二人の非番に合せて芝居のチケットをとってあげたのよ。いま、一番センセーショナルな芝居よ。社会派ミステリーの話題作『黄昏の果てに』。この芝居、タイトルくらいきいたことあるでしょう? あなたたちが理解出来るわけはないし、上流階級でないとチケットが取れないからあなたたちが行っても場違いこの上ないでしょうけどね」

 彼女は、つい先日雑用係のカール・ライナーと結婚したばかりなのである。

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