闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
* prologue as monologue / Kodemari Asakura *
十年経っても俺と結婚したいと思ってくれる?
オトナにならないと、結婚することはできないんだよ。
――幼かったあたしは、彼の言葉を鵜呑みにすることしかできなかった。
オトナになる、彼のオンナになる、その意味すら理解せずに。
結婚したらめでたしめでたしだと思っていた。
読み聞かせで何度もせがんだお姫様と王子様の物語みたいに。
だから十年、彼を好きでいつづけようと、幼心に誓った。
ただ、アカネに負けたくない、それだけの気持ちで。
「うん。あたし……――ちゃんのお嫁さんになる!」
その一方的な宣言が、彼の足枷になることすら、そのときのあたしは気づいていなかった。
いや、気づいていて、無邪気に気づいていないふりをしていたんだ。
恋する少女はときに残酷で、狡猾な表情を魅せるものだから。
だからたぶん、罰が当たったんだと思う。