闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 現に、眉をへの字にして、どういうことだと天につづきを促している。

「女神の娘が茜里第二に転院してくる」
「は……?」
「審判の時が近い」

 うんざりした声の天に、雨龍は目を丸くする。

「第二、っていまじゃ機能してねーぞ。それに使えるとしてももともと閉鎖病棟だから……だからなのか? おい、嘘だろ?」
「残念ながら真実だ。あーあ、自分達の代は引っ掛からないと思っていたのに……「冬」がしくじった」
「ああ桜庭ね……たしかに彼の死は早すぎた」

 桜庭雪之丞。赤根の「冬」の一族から飛び出し一代で財を成し遂げた異端児。「冬」から「春」へと手を伸ばし、諸神から女神を奪い密かに子をーー亜桜小手鞠を孕ませた忌まわしき赤根の汚点。
 ――だが、天にとってみればそれはどうでもいいことだ。

「それで、彼女に白羽の矢が立ったのか?」
「さあね。雨龍ならもう情報手にしているかと思ったんだけど、狸はまだ何も言っていないのね」
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