闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「茜里の鍵を渡しなさい……そう、いい子ね。それから、あたくしの可愛い子どもたちのことはもう、放っておきなさい。貴女の役割は、不要よ」

 催眠術にかけられたかのように、天は自分のバッグから、ちゃら……、と花のストラップがついた鍵を手渡す。
 天の実家の鍵を受け取った菊花はつまらなそうに彼女の顎から手をはなす。

「……私の、復讐は」
「充分でしょう。それともまだ、物足りない?」
「いいえ、いいえ」

 菊花に圧倒されて、天は涙を溢す。罪ならもう犯している。コデマリを“女神”の“器”に仕立てたのは菊花が死んでいると思ったから。だから赤根の人間はコデマリに、記憶を取り戻したばかりの無垢な乙女に非常なことを……


「“女神”は貴女を許すわ。“諸神”を降ろす“女神”の器を壊したことを」


 だってあたくしもまた、禁忌を犯したいけない子だから。
 そう言って、菊花は天を抱き締める。
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