闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
* work is looking two not saved / Reiko Katohgi *
緑生い茂る雑木林で生命の限り鳴きつづけ、地面に堕ちた大量の蝉の死骸を一瞥しつつ、加藤木羚子はつまらなそうに言葉を紡ぐ。
「諸見里本家は“女神”の加護を奪われたから没落した? それは結果論でしかないわ。ウリュウ先生、あなたがコデマリに何もしていないことを知っているんだけど、その理由をうかがってもよろしいかしら?」
「見当はついているだろうに」
「ですけど、先生の口から直接お聞きしたいんですよー」
「それを聞いてどうする」
「この膠着状態を打破するための道しるべを探ろうかと」
先程まで無愛想だった表情に微笑みが浮かぶ。何か良からぬことを考えている加藤木の言葉の前で、赤根雨龍はふん、と鼻を鳴らす。