闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
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「救われないふたりを見守るだけの簡単なお仕事」
半月前に亜桜雛菊と逢ったという楢篠天はそう言って、わざわざ加藤木に伝えてきた。なぜか、茜里第二病院の裏手にある薬草園の門前で。
「コデマリがジユウとの間に子どもを作ったら、私が堕胎することになっていたの」
「え?」
「そうならないように、ふたりをはなればなれにさせたかった。コデマリはジユウが兄であることを知って嘆き悲しんで車に飛び込んだ」
まるで見てきたことのように口にする天は、残念そうに微笑む。
「だけどジユウは、彼女を救うために自分が進もうとしていた道をねじ曲げてしまった」
あの交通事故後の彼の奮闘ぶりを見ていた天は、計り知れない彼の狂気に怖気づいた。彼女のためなら生命すら削る、己の信念すら曲げかねない彼のどこまでも一途な姿を、はやく崩さないといけないと思っていた。けれど天はギリギリまで我慢した。
ふたりが許されざる関係だということを伝えたのは、彼女が転院してから。
「絶望するかと思ったけど、逆に闘志を燃やしちゃったみたい」
何を言っているのか理解できない。加藤木は門の扉を開けて彼女に問う。