闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「鍵、持っていないんですか」
「渡しちゃった」
泣き笑いの表情で、弱りきった天が告げる。このひともまた、幼い頃から“諸神信仰”に人生をぐちゃぐちゃにされたひとり。
加藤木は「仕方ないですね」と天の手をぎゅっと握る。とつぜん手を握られた天は怯えた表情を浮かべている。
「ナラシノ先生は亜桜雛菊が怖いのね」
「加藤木先生には、わからないわ」
「わかりたくもないわぁ」
加藤木に逢いに来た天は、小手毬の身に危険が迫っているとわざわざ伝えてきたのだ。亜桜雛菊のもとで諸見里自由が匿われており、彼は彼女の奪還を狙っていると。律儀だなと、加藤木は苦笑する。
「わたしは亜桜雛菊が何者か知らないもの。けれど、ジユウくんが彼女の支持を得てことを起こしたというのなら、こっちも考えていたことがあるの」
「何を考えているの?」
「ナラシノ先生は救われないふたりを見守るだけの簡単なお仕事だなんておっしゃってましたが、わたしはふたりを救う方法を知っています」
「そんなことが、可能なの……?」
驚く天に、加藤木はこくりと頷く。
青白かった天の頬に、赤みが差す。
「渡しちゃった」
泣き笑いの表情で、弱りきった天が告げる。このひともまた、幼い頃から“諸神信仰”に人生をぐちゃぐちゃにされたひとり。
加藤木は「仕方ないですね」と天の手をぎゅっと握る。とつぜん手を握られた天は怯えた表情を浮かべている。
「ナラシノ先生は亜桜雛菊が怖いのね」
「加藤木先生には、わからないわ」
「わかりたくもないわぁ」
加藤木に逢いに来た天は、小手毬の身に危険が迫っているとわざわざ伝えてきたのだ。亜桜雛菊のもとで諸見里自由が匿われており、彼は彼女の奪還を狙っていると。律儀だなと、加藤木は苦笑する。
「わたしは亜桜雛菊が何者か知らないもの。けれど、ジユウくんが彼女の支持を得てことを起こしたというのなら、こっちも考えていたことがあるの」
「何を考えているの?」
「ナラシノ先生は救われないふたりを見守るだけの簡単なお仕事だなんておっしゃってましたが、わたしはふたりを救う方法を知っています」
「そんなことが、可能なの……?」
驚く天に、加藤木はこくりと頷く。
青白かった天の頬に、赤みが差す。