闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「あなたの旦那さんは“諸神信仰”に毒されていた先生を救ってくれたじゃないですか。同じことを彼らはするの」
「だけどコデマリとジユウは婚姻関係を結べないわ」
「いいえ。……ジユウくんは知ってる」
「何、を」

 加藤木に詰め寄ろうとした天が、そこでびくりと身体の動きを止める。
 自分たち以外にも人間がいることに気がついたのだ。

「天。亜桜小手毬ならもうここにはいない」
「雨龍? どういうこと?」
「彼女は死んだ」

 院長にはすでに伝えていると、それだけ言って雨龍は姿を消す。
 天は何が起こっているのか混乱しながら、加藤木に視線を向ける。

「……死んだって、嘘でしょ」
「嘘だけど、ここでは本当。そうしないと、ふたりを救えないじゃない」
「加藤木先生?」
「ジユウくんはいい顔してないけど、ミチノク先生と一緒に保護してるわ。心配しないで」
「え。彼、が?」
「“諸神”に惑わされそうになったけど、彼は自分のすべきことを行うだけだと、開き直っている。コデマリは誰の“器”にもならない」
「それって」

 戸惑う天の前で、加藤木は宣言する。


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