闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 ――うん、あたし……ジユウおにいちゃんのお嫁さんになる!

 そう言ってくれた日が懐かしい。
 あの頃からずっと、自由は小手毬を手に入れたかった。
 早く大人になって、彼女に求婚するのだと、必死になって。
 さまざまな障壁があったが、ようやくここまで来れた。もう、邪魔者はどこにもいない。
 あとは彼女と新天地で――……


 べしっ!


 ――べしっ?
 どうやら、小手毬の髪を撫でながらうとうとしていたようだ。自由は首をあげて音がした方向へ顔を向ける。
 スケルトングリーンの酸素吸入マスクが床に投げ捨てられている。

「!?」
「じゃま」

 小手毬の煩わしそうな声に、自由は目を輝かせる。
 透き通った漆黒の瞳は、事故の後遺症で左右の大きさが異なるが、それでも彼女の愛らしさが変わることはなかった。

「小手毬、目が覚めたんだな!」
「――?」

 嬉しそうに声をかける自由の前で、小手毬は首を傾げている。
 状況が把握できないのは仕方がない。そう思ったが、小手毬の表情は自由の姿を見ても変化がない。
 そのうえ。
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