闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 もしかしたら嫉妬、だろうか。手毬は首を傾げつつも、自由が嫌がるのならと、自ら菊花に近づくことをやめた。

 陸奥と加藤木は地域医療センターへ戻ることになり、手毬のケアは自由ひとりで行うことになった。
 ようやく彼は念願の彼女の担当医になれたのだ。
 
 菊花が管理している施設で手毬は自由とふたりで過ごしながら、体力を回復させていく。
 ときどき淫らな夢を見ておかしくなりそうになったけれど、自由にそのことを告白して以来、彼が毎晩気持ちいいことを教えてくれるようになった。

「手毬は俺だけのものだからな」
「うん」

 失われた記憶に言及することなく、自由は手毬を囲い、溺愛する。
 そんな箱庭での優しい日々も、残すところあとちょっと。



 ふたりはもうすぐ、この国を出て結婚する。
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