闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
* epilogue as introduction / Jiyuu and Temari *
言葉のわからない国の、ちいさな教会で、手毬は真っ白なウェディングドレスを着た。
出国時に菊花が用意してくれたシンプルなドレスは、亡き父である雪之丞が娘のためにと密かに用意させていたものだという。父親の記憶などほとんど覚えていない手毬だったが、ドレスを着て鏡の前で自分の姿を映した際に「ユキノジョーの、おじさん?」と驚いたような声をあげていた。
自由は自前のアッシュグレーのスーツにその辺に生えていた生花のコサージュというシンプルな出で立ちだったが、白衣姿ばかり見ていた手毬には新鮮に映ったらしく、「ジユウ、かっこいい!」と大喜びしていた。
「手毬もキレイだよ。ようやく、あのときの約束を果たせるな」
「ん。覚えていなくて、ごめんなさい」
「無理に思い出す必要はないよ。俺が覚えている」