闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
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誰にも祝福されない結婚式を終えたふたりは、そのまま宿泊先ですべてをさらけだして、肌を重ねあって、ぬくもりをわかちあった。
唇をふれあわせて、互いの舌を絡めあわせて、わざといやらしい音を立てて、劣情を掻き立てる。
自由にふれられると、手毬の身体はとろとろに蕩けてしまう。官能の波に浚われると、考えていたことが霧散してしまう。
――あたし、ジユウおにいちゃんと結ばれてもいいんだ。
彼とひとつになって、意識を飛ばした瞬間、手毬は失ったはずの記憶を取り戻す。
淫らな女神であれと説教されて、いやらしい身体へと調教された悪夢の日々を。
けれど身体は正直だから、これは医療行為だと、受け入れていた。
媚薬を施され、医療行為という名で気持ちいいことを教え込まれた身体が疼くのは、自然なことなのだろうか。
まるで麻酔を打たれて大手術をしたときの、術後の後遺症のようだ。
思い通りにならない身体の痛みを取り除いてくれた陸奥はここにはいない。
けれど、いまの手毬には自由がいる。思い通りにならない身体の疼きを散らしてくれる、自分だけの担当医が。