雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 私のマンションで会って以来、雨宮課長と関わる事は避けていた。
 近くで見たのは二週間ぶり。濃紺のスーツが似合っている。いつ会っても課長は眩しい。

 すぐに心臓が反応しちゃう。好きって気持ちが溢れてくる。だけど、今はそれを出せない。

「雨宮課長、何かご用ですか?」
「いや」
 短くそれだけ言うと、課長はトレーを持ったまま背を向ける。

「総務カチョーさんは女優だけじゃなくて、女子社員にも手を出しているのか」
 すぐ隣に座っていた男性社員がからかうように言った。
 何も知らないクセに課長の事を悪く言って腹が立つ。もう黙っていられない。

「勝手な事を言うのはやめて下さい」
 立ち上がり、男性社員を睨んだ。

「雨宮課長はそんな人じゃないです。ただの妬みで言うのはやめて下さい!」
「ちょっと奈々子」
 桃子がおろおろする。

「なんだと」
 男性社員も立ち上がって私を睨む。
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