雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 女子トイレに駆け込むと、やっぱり生理だった。
 今日は最悪。ため息が出る。

「だよねー」
 楽し気な話し声が聞えてきた。この声は疋田さん。
 私と顔を合わせるのはきっと疋田さんも気まずいだろう。疋田さんたちが出ていってから個室から出よう。

「ところで、あの子、なんなの? 社食でうちの課長を謝らすとか、マジありえないんだけど。宣伝部のエースとか言われて調子に乗り過ぎでしょ」
 私の話だ。疋田さんと話すこの声はさっきの会議に出ていた人。

「宣伝部でも阿久津部長に噛み付いていたんでしょう。可愛げがないよね。男いないんじゃない? いつもパンツスーツで私は女捨てて一生懸命やっていますみたいな、ああいう女大嫌い。きっと一生独身で孤独死するんじゃない」
 この声は疋田さん。
 確かに私は可愛げがないですよ。でもね、疋田さんも男性社員に色目使っていないで、ちゃんと仕事をしたらどうって言いたくなる所あるよ。今日は言わないであげるけどね。

「あの女、雨宮課長が好きなんじゃないの? なんか課長の前では愛想いいし。だから週刊誌が悔しかったのよ。佐伯リカコと比べたら、月とスッポンだってわかんないのかね」
「鏡見た事ないんじゃない? まあ、あんなの課長が相手にする訳ないけど」
 さっきまで平気だったのに、佐伯リカコの事を言われたら泣きそうになる。

 胸が痛い。どうせ私は雨宮課長と釣り合い取れませんよ。でも、好きなんだもの。
< 117 / 211 >

この作品をシェア

pagetop