雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「もう空が明るいね」

 雨宮課長が窓の外に視線を向ける。
 本当だ。いつの間にか夜が明けている。

 何時? えっ、六時! うそ。感覚的には一時間ぐらいだと思っていたけど、五時間も経っていたの!
 私、一晩中、雨宮課長と映画の話をしていたんだ。
 
「まさかファミレスでオールナイトをするとは思わなかった」
 雨宮課長が笑った。

「そうですね。映画館で過ごす予定が。あ、でも、課長は途中で席を立ちましたよね?」
「『ショーシャンクの空に』を観たら帰ろうと思っていたんだ」

 という事は私が引きとめてしまったという事?

「す、すみません! 長々とお付き合いをさせて」
「気にしないで。コーヒーを飲もうと誘ったのは僕だし。それに帰ったって誰か待っている訳でもないしね。でも、眠いな。中島さんと違っておじさんだからそろそろ限界」
「おじさんだなんて、そんな」
「37歳。立派なおじさんだよ」

 おじさんだなんて、とんでもない。雨宮課長からは色気がだだ漏れている。今だってテーブルに肘をついて、こっちを見る何気ない表情が色っぽく見えて困る。

 映画の話で夢中になって気づかなかったけど、雨宮課長は魅力的な男性だ。
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