雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 二時間と少しのおとぎ話のようなラブストーリーは何度観ても甘い気持ちにさせる。
 サブリナはエンディングも甘くて好き。パリの風景をバックにハリソン・フォードとをジュリア・オーモンドが甘いキスをしている。そして、スティングの囁くような甘い歌声と重なるようにエンドロールが流れていく。

 課長の方に視線を向けると、私の甘くなっている気持ちが伝わったようにチュッと短く唇にキスをしてくれた。
 最高に幸せ。こんな風に課長と映画を観られたなんて。

 名画座を出た後も、離れがたくて私から「家に来ませんか」と誘ってしまった。

「行っていいの? 今夜は狼になるよ」
 狼だなんて……ドキッとする。
 雨宮課長が求めてくれるのなら抱かれたい。でも、生理来ちゃったんだ……。
 壁に頭を打ちつけたい程、へこむ。

「やっぱり。今夜はやめておきます」
「そうだね」
 クスクスと課長が笑う。

「じゃあ、また明日」
 地下鉄の駅に着くと課長が言った。
 課長と朝までファミレスにいた時の事を思い出す。あの時も、別れ際が名残惜しかった。

「はい。また明日」
「奈々ちゃん、ちゃんとご飯食べるんだぞ」
「あっ、はい」
「今日、社食で見かけた時、痩せたなって思ったけど、こうして近くで見るとすごく痩せた気がする」
 課長がじっと私を見つめる。

「何が食べたい?」
「えっ」
「やっぱり奈々ちゃん家に行く。ご飯作ってあげたいから」
 ご飯作ってくれるって言葉に愛情を感じる。急に食欲が出て来た。

「あの、課長の手料理ならなんでも」
「そうだな。ミートソースなんてどう?」
「好きです」
「決まり」
 思いがけない展開に胸がドキドキする。
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