雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 玄関ドアを開けると、「おじゃまします」と言って雨宮課長が部屋に上がる。
 二週間前に雨宮課長が来た日から、いつ来てもらってもいいように部屋は綺麗にしてあった。

 廊下を進んで、ドアを開けて、ダイニングキッチンの電気を点けると、後ろから雨宮課長に抱きしめられた。

「奈々ちゃん……」
 色っぽく囁かれてドキッとする。
 振り向くと、唇が重なった。

 私を求める唇は激しい。私の唇の全てを食べ尽くすようなキスに窒息しそうになる。

 こんなに求められた事はない。
 激しいキスは私の事を好きだと言っているみたいで、胸が締め付けられる。

 気づいたらソファに横になって課長とキスをしていた。体が熱い。このまま課長に抱かれたい。だけど……。

「あの、課長、今日はここまでで」
 蕩けそうになる理性を総動員して、課長の唇から離れた。

「ごめん。つい」
 課長が気まずそうな笑みを浮かべる。

「すみません。実は生理が来てしまって」
 眼鏡越しの瞳が戸惑ったように揺れた。

「ごめん! 奈々ちゃん、お腹痛い? 温かい飲み物でも作ろうか」
 生理の事、がっかりされると思ったら、いきなり課長が心配し始めて驚いた。
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