雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 課長が作ってくれたミートソースは世界一美味しかった。
 美味しいを連発しながら食べていると、奈々ちゃんは本当に作り甲斐があるねって、言ってくれた。
 
 課長が不意に「会社ではありがとう」と切り出した。
 一瞬何の事だろうと思う。首を傾げて考えていると、課長がクスッと笑う。

「社食での事」
 ようやくピンときた。
「俺を庇ってくれたんだろ?」
「すみません。私、後先考えず余計な事しました。結果的に雨宮課長に頭を下げさせる事をしてしまって」
「嬉しかったよ。だけど」
 眼鏡越しの瞳が心配そうに揺れる。
「奈々ちゃん、大丈夫だった? 誰かに何か言われなかった? なんか変な噂を耳にしたけど」
 私の手を優しく握りながら訊いてくれる。
 心配してくれたんだと思ったら、胸が詰まって、喉の奥に熱い塊がこみあげてくる。

「大丈夫です。中島奈々子は無敵なんです」
 おどけて笑って見せると、課長が「俺の恋人は逞しいな」と頭を撫でてくれた。

 俺の恋人……。さり気なく言われた言葉に胸が高鳴る。
 嬉しい! 嬉しくて堪らない! 課長がハッキリと恋人宣言してくれて、不安だった気持ちが吹き飛んだ。

 嬉しさを噛みしめていると、課長に「ほっぺが落ちそうなぐらい緩んでるけど」って優しく頬を摘まれる。
 えへっ、だって幸せなんだもの。
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