雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 今夜は課長に沢山抱きしてもらった。抱きしめられる度に、課長に大事にされているんだと感じる。
 課長の胸に耳を当てると心臓の音が聞こえる。ドクン、ドクンって規則正しく打っている鼓動は、今一緒にいる事を実感させてくれる。ずっと課長とこのままでいたいな。だけど、楽しい時間は過ぎるのが早い。あっという間に日付が変わる時刻になった。そろそろ課長を帰さないといけない時間……。

「奈々ちゃん、寂しそうな顔して、どうした?」
「もうすぐ課長、帰っちゃうのかなと思って」
「そうだね。電車がある時間には帰らないと」
「泊まっていきませんか? 生理ですけど」
「何その誘い文句」
 ぷっと課長が笑う。

「変ですか?」
「誠実な感じがしていいなと思って」
「どこが誠実なんですか?」
「エッチはできないけど、一緒にいたいって奈々ちゃんの気持ちが伝わって来て。俺の事、物凄く好きな感じがしていい」
「物凄く好きですよ。だから泊まっていって」
「同じベッドに眠るの?」
「課長が嫌じゃなければ」
「嫌な訳ないじゃないか。好きな子が隣で眠っているなんて」
「じゃあ、泊まっていって」
 上目遣いで課長を見つめてみた。
 男の人はこういうの好きだって聞いた事があるから。

「その可愛い顔は反則だ。泊まっていこうかな」
 テーブルの上のスマホが振動する。雨宮課長のスマホだ。
 表示された名前に胸が痛くなる。佐伯リカコからだった。
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