雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 みんなが揃い、料理が運ばれ始める。
 雰囲気を壊さないように精一杯明るく振舞い、目の前に置かれたふぐ刺しに箸を伸ばした。

「美味しそう! いただきます」
 ふぐ刺しはふぐの食感を楽しめるように身を厚めに切ってあった。
 塩で食べるのも美味しいと教わって、食べてみた。うまっ! 甘みのある身に、程よい歯ごたえ。幸せ。

「さっきは悪かった。ほんの冗談だったんだ。すまん」
 隣の望月先生と目が合うと、すまなそうに頭を下げられた。
 まさか先生が謝ってくれるとは思わなかった。

「俺のも食べるか?」
 先生がふぐ刺のお皿を差し出した。
 先生は意地悪だけど、悪い人ではない気がした。

「では、遠慮なくいただきます」
 三切れ取ると、「とり過ぎだろ」と先生に言われる。

「じゃあ、もう一切れ」
 さらに一切れ取った。

「これで先生の謝罪は受け入れてあげますから」
 私の言葉に「まいったな」と言って先生が笑う。それから先生とは打ち解けられた。
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