雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「前は彼女いないって言っていたのに。もしかして最近できた?」
 冷やかすような佐伯リカコの声がする。
「そうだよ」
「ふーん。最近か」
「何だよ」
「妬けるなと思って。拓海はもう私の事好きじゃないの? 私たち嫌いで別れた訳じゃないでしょ?」

 何言ってるの?
 障子越しに離れていた二人の影が重なったように見えた。

「くっつくな」
「いいじゃない。元夫婦なんだから」
「やめろ」
「焦ってるの? 拓海かわいい」

 何このやり取り……。嫉妬で胸が焦げて苦しくなる。

「やめろって言っているだろ!」
 障子越しに背の高い影が立ち上がるのがわかった。
 あ、拓海さんがこっちに来る! 慌てて、女子トイレの中に入って隠れた。

 今は顔を合わせたくない。きっと感情的になって怒ってしまうから。
 はあ。こんな現場見たくなかったな。
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