雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「栗原さん、お土産です」
 ケーキ屋の袋を差し出すと、栗原さんが笑顔を浮かべてくれた。
「ありがとう。ケーキ?」
「フルーツタルトです」
「じゃあ、あとで皆で食べよう」
「はい」
 まりえちゃんが嬉しそうに返事をした。

「ところでご主人は?」
「今日は仕事で幕張まで行ってる」
 栗原さんがタルトの箱を冷蔵庫に仕舞いながら答える。

「何のお仕事なんですか?」
 まりえちゃんが尋ねる。

「カメラマン。今日は結婚式の撮影だって」
「えー! 凄い!」
 まりえちゃんの高い声が響く。
「全然すごくないよ。お給料安いし」
 栗原さんが苦笑い。
「でもさ、好きな事を仕事にしていてカッコイイんだよね」
「ご主人との出会いは大学の映画研究会でしたよね」
 まりえちゃんが言った。
「そうそう。まりえちゃん、よく覚えていたね。そこで拓ちゃんとも一緒だったんだけどさ」
「拓ちゃん?」
 まりえちゃんがキョトンとする。

「あ、雨宮課長」
 栗原さんが言い直した。
 えー! 栗原さんと拓海さんって大学からの付き合いだったの!

「栗原さん、雨宮課長を拓ちゃん呼びですか!」
 まりえちゃんと一緒に驚いた。
「友達だからね」
 そっか。だから、栗原さん、拓海さんの自宅を知っていたのか。

「ちょっと、ごめん」
 栗原さんのスマホが鳴り、栗原さんがキッチンから出て行く。

 ご主人からの電話かな?
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