雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 カフェバーに入るとコーヒーの香りが濃くなる。
 木のぬくもりを感じる内装は来る度にほっとする。

「久保田はカフェオレだよね?」
「はい」

 久保田を窓際のカウンター席に座らせてから、バリスタのいるレジカウンターに買いに行く。
 本日のブレンドは何だろうと黒板に書かれたメニューを眺める。あ、おやつのブルーベリーマフィン美味しそう。先週はなかったやつだ。小腹もすいたし、マフィンも食べようかな。

「ブルーベリーマフィン、おすすめですよ」
 ショーケースのマフィンを眺めていたら、横から耳に心地いい低音ヴォイスがした。声を聞いた瞬間、耳が熱くなる。

「お疲れ様です。雨宮課長」
「お疲れ。中島さん」
 穏やかな雨宮課長の顔を見て、胸がトクンと高鳴った。

「雨宮課長もコーヒータイムですか?」
「僕は店内のチェックが終わった所。ここは総務部の管轄だからね」
 脇に抱えたファイルを見せるように雨宮課長が掲げた。

「それはご苦労様です」
 軽い調子で口にすると、雨宮課長がクスッと笑った。たったそれだけのやり取りだけど癒される。なぜか雨宮課長に会うだけで嬉しくなる。

 映画館で会ってから今日で一週間。雨宮課長との仲が以前よりも親密になった気がする。
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