雨宮課長に甘えたい　　【コンテスト用】
　二人でテーブルに出来たばかりの料理を並べて「いただきます」と手を合わせてからご飯を食べた。

　鯖の味噌煮、ほうれん草のお浸し、ワカメと大根のお味噌汁。拓海さんの手料理はやっぱり美味しい。拓海さんと毎日、一緒にご飯を食べられたらいいな、なんて欲張りな事を思ってしまう。

「奈々ちゃんと暮らしたいな」
　拓海さんが独り言のように口にした。

「あ、ごめん」
　ハッとしたように拓海さんがお箸を止める。

「一緒に暮らしたいなんて、重たかったよな」
　ブンブン頭を振る。だって、だって同じ事を思ったから。

「拓海さん、私も同じ。私も拓海さんと一緒に暮らしたいです。拓海さんといると日常の事が何でも楽しく感じられて、物凄く幸せな気持ちになって、だから」
　拓海さんが頭を撫でてくれた。

「ありがとう。奈々ちゃんの言葉が嬉しいよ。その言葉でご飯三杯はいけそう」
「何ですか、それ」
「嬉しくて堪らないって事。今日も奈々ちゃんの事が好きになった。毎日、好きになっているよ」
「拓海さん、恋愛すると、いつもそんな甘い事言っているんですか？」
「奈々ちゃんにしか言った事ないよ。こんなに好きだって思うのは奈々ちゃんが初めてなんだ。だから、そばにいて欲しい。奈々ちゃんが一番大切なんだ。それをわかって欲しい」
　拓海さんが不安そうに眉頭を寄せる。
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