雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「総務の雨宮課長と親しいんですか?」
 買ったばかりのカフェオレを久保田の前に置くと意外そうな顔を向けて来た。

「親しいって程じゃないけど、会えば雑談ぐらいはするかな」
「そういえば中島さんが企画した社内試写会はカフェバーを借りてやっているんですよね?」

 プレスリリース(マスコミ試写)前の作品の感想が聞きたくて、時々、カフェバーで試写会を開かせてもらっている。
 思えばカフェバーでの試写会は私が雨宮課長と関わった最初の仕事だった。

 カフェバーがオーブンしたのは7年前で、入社二年目の私はこの場所で試写会が開けたら素敵だと思ってしまった。それで雨宮課長にお願いしに行ったけど、山のようなダメ出しをされた。何度も雨宮課長に企画書を提出してOKをもらった時は心から嬉しかった。

 あの時は雨宮課長のわからずやって思っていたけど、今は雨宮課長にダメ出しをしてもらった事がありがたい。それまで思いつきだけで行動していたけど、物事を具体的にしていくプロセスを雨宮課長とのやり取りで学ばせてもらった。だから私はその後、宣伝部で活躍できたのかもしれない。

 思い出したら胸がじーんとしてくる。

「雨宮課長、いい人だけど気をつけた方がいいですよ」
 久保田の言葉にえっと声が出た。
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