雨宮課長に甘えたい　　【コンテスト用】
「ここだけの話ですけど、女性関係が派手らしいって、噂があるみたいですから」
　久保田が潜めた声で言った。
　社内の噂話に疎いから全然知らなかった。

「でも、噂話でしょ？」
　久保田が不機嫌そうな声で「そうですけど」と呟き、カフェオレを啜ってから、こっちを見る。
「そんな噂をされるような事があったみたいですよ。中島さんも気をつけた方がいいですよ」
「何を気をつけるのよ。雨宮課長は尊敬する部署の違う上司ってだけよ」
「それ、雨宮課長に持って行こうとかって思ってません？」

　コーヒーの脇に置いたブルーベリーマフィンが入った紙袋を久保田が睨む。
　久保田に言い当てられて、なんだか気まずい。

「これは、後で食べようと思って買ったの」
「本当ですかね」
「そんな事より、『ラストヒロイン』のプロモーションしっかりやってよ。阿久津部長の顔色を見過ぎて変な方向に行かないように。異動になっても私が睨んでいると思いなさい」

　バンッと久保田の背中を叩くと、あいててと前のめりになった。
　久保田はちょっと頼りないから心配。
< 21 / 211 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop