雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 新橋の名画座では今夜は「フォレストガンプ 一期一会」を上映している。ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演で1994年公開のアメリカ映画。主人公のガンプは知能指数が低く、上手く歩けないけど、お母さんがいつもガンプを勇気づける。

「人生はチョコレート箱、食べてみるまで分からない」
 お母さんのこの言葉に支えられて、ガンプは懸命に歩く練習をする。そして奇跡が起きて、歩く事が下手だった彼は誰よりも足が速くなって人生を切り開いていく。

 諦めずに真っすぐに生きるガンプの姿に何度も勇気づけられた。そして今日程、ガンプのお母さんの言葉が身に染みる事はない。

 人生はチョコレート箱、食べてみるまで分からない。

 本当だ。宣伝部から外されると聞いた時は絶望しかなかったけど、腐らずに目の前の事を一生懸命やっていたら、道が拓かれた。

「奈々ちゃん、泣き過ぎ」
 隣に座る拓海さんがあの日と同じようにハンカチを貸してくれる。
 目元にあてると甘い柔軟剤の匂いがする。安心する匂い。

 今日まで私が腐らずにいられたのは拓海さんがいてくれたからだ。
 そして拓海さんが私に宣伝部に戻る切っ掛けをくれた。

「フラワームーンの願い」と出会えた事は本当に幸運だった。
 拓海さんの作品を私の手で世に送り出す事が出来ると思ったら嬉しくて堪らない。

 拓海さん、ありがとう。私がこんなに幸せなのは拓海さんのおかげです。
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