雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 雨宮課長の名前を出そうか。でも、色恋と結びつけられる。

「何?」
 バッチリとアイメイクをした大きな目がこっちを向く。
 桃子ほど美人だったらいいのにな。
「いや、やっぱりいい」
「えー、その言い方気になる。奈々子、何かあったでしょ?」
「あり過ぎだってさっきから話してるじゃん」
「仕事の事じゃなくて。男のこと」

 雨宮課長が浮かんだ。

「な、何もないよ」
「先週の金曜日、そういえばどこにいたの? 私、電話したんだけどな」
 桃子が電話をくれた時、映画館で泣いていた。
「心配したんだよ。宣伝部から外されるって耳に挟んだから」
「さすが人事部。情報早いね」
「阿久津部長がうちの小宮部長と話していたのを聞いたの。中島をどっかにやりたいって」

 どっかにやりたいって酷い。私は荷物か?

「それで小宮部長が異動先を探したみたいで」
 胸がムカムカする。阿久津の一声で簡単に私の処遇って決まるんだ。
 阿久津。どんだけ権力持ってるんだよ。

「危うく奈々子、グループ会社の札幌営業所行きになる所だったよ」
 えっ、グループ会社? 札幌営業所?

「それを食い止めたのが雨宮課長なんだけどね」

 雨宮課長が!
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