雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「何か飲み物でも買ってきましょうか?」
 上映が終わってシアタールームが明るくなると、ハンカチの人に聞かれた。

「い、いえ」
 喉が渇いていたけど、そこまでお世話になるのは気が引ける。
 泣いた顔を見られるのが恥ずかしくて、ハンカチで顔を抑えたまま、何もいらない事を伝える為に首を振った。

「そうですか。では、僕はこれで」
 隣で立ち上がる気配がした。
 あと三本映画が残っていたから帰るとは思わなかった。

「あ、あの」
 ハンカチから顔をあげると、もう男の人はいない。

 ハンカチ返さなきゃ。お礼も。
 男の人を追いかけてロビーに出た。
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