雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「中島さん、どうして元上司のあんたが謝罪しに来るんだ? 久保田君の今の上司が謝罪しに来るのが筋じゃないのか? それに本人はどうした? 今のこの場に久保田君がいるべきではないのか? 総務部のあんたは部外者だろ」

 部外者という言葉が胸をえぐる。
 望月先生が言っている事は正しい。久保田を連れて来なかったのは失敗だった。久保田を守ってやりたくて、スタンドプレーに出てしまった。でも、簡単には引き下がれない。奥様がくれたチャンスを活かしたい。

「総務部におりますが部外者ではございません。私も『今日子』の映画を配給するウエストシネマズの人間です。今は社をあげて『今日子』のプロモーションをしている所です。試写を見ましたが、先生の小説が忠実に再現されておりました。『今日子』を見た人はみんな幸せな気持ちになれると思うんです。私はそんな幸せ溢れる映画を世界中の人に届けたいんです。その為には先生の力が必要です。先生がプロモーションに加わって下されば今以上に注目されます。私は多くの方と大好きな映画『今日子』を分かち合いたいんです。どうか、先生、お力をお貸し下さい」

 望月先生がじっとこっちを見て、何かを思いついたような笑みを浮かべた。

「わかった。チャンスをやろう」
 そう望月先生が言った所で、応接室に阿久津と久保田が入って来た。
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