雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「望月先生、この度はうちの久保田が失礼を致しました。私、久保田の上司でウエストシネマズの宣伝部長、阿久津と申します」
 阿久津の顔を見て頬がひきつる。まさか阿久津が出てくるとは思わなかった。
 
「部長さんまで来たんですか。しかし、部長さん、入ってくるタイミングが絶妙ですね。もしやドアの外で話を聞いていましたか?」
「とんでもないです。たった今、駆けつけた所でございます。来るのが遅くなってしまい申し訳ございませんでした。中島にではなく、私に何なりとお申し付けください」
「いや、俺は中島さんに心を動かされたんです。中島さんにこの件はお願いしたい。でなければ、プロモーション活動には参加しません」

 阿久津がこっちを見下ろして睨む。余計な事をしてくれたなと、その顔に書いてあるよう。

「中島さん、今、俺はどうしても観たい映画があってね。15年前の作品なんだが、出版社のツテを使っても見つけられなくて困っている」

 望月先生が土下座したままの私の腕を取り、立たせてくれる。

「その映画を見つけたらプロモーション活動に戻ってくれるんですか?」
「ああ、戻ろう」
「承知いたしました。私が責任を持って探してきます」
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