雨宮課長に甘えたい　　【コンテスト用】

雨宮課長と温泉旅館

　せっかくだから観光名所でも行ってみようかと、雨宮課長が連れて来てくれたのは鳴子峡。東北屈指の大渓谷として有名で、V字型の渓谷の深さは100メートルもあるそう。

「100メートルと言えばお台場にある大観覧車の直径もそれぐらいだそうだ」
　課長が渓谷の深さを感じられるように情報を足してくれる。課長っていろんな事を知っていてすごいな。

「紅葉の見ごろは10月から11月の時期になるから、来るには少し早いが、今の時期でも自然が楽しめると思うよ」と話しながら、雨宮課長はコンパクトカーを鳴子峡のレストハウスがある駐車場に停めた。車から降りた途端、ひんやりとした冷気と、緑の匂いを感じる。この場所からもう自然が楽しめる。

　わくわくとした気持ちが抑えられなくて、「鳴子峡」と書かれた展望台の方に足を進めた。

「うわー！　凄い！」
　雲一つない青空を背景に渓谷とその向こうに大きな橋が見える。まだ紅葉はしていなかったけど、一面に広がる山の緑が太陽の光を浴びてキラキラとして綺麗。川の音も聞こえてくる。何これ！　素敵！

「向こうに見える橋は『大深沢橋』だね」
　隣に立つ雨宮課長が教えてくれる。
「お昼を食べたら遊歩道を散歩しようか」
「はい！」
　仕事で来ているのに、もうすっかり観光気分。
　望月先生のミッションを受けて、こんなご褒美があるとは思わなかった。
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