雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「ドリンクバー二つ」

 雨宮課長がオーダーをした。
 ウェイターがご自由にどうぞと言って、ドリンクバーの場所を伝えてから窓際のテーブル席から離れた。客は私たちしかいないよう。

 スマホを見ると午前1時という表示が目に入る。予定通りだったら、オールナイトの「プラダを着た悪魔」を見ている頃。今夜は見られる気分じゃなかったな。

 短く息をつき、向かいの席の雨宮課長を見ると、目が合った。

「雨宮課長、お先にどうぞ」
 社外とは言え、職位が上の雨宮課長に先に行ってもらうのが当然だと思って口にしたけど、雨宮課長は座ったまま。
 ドリンクバー行かないの? これって、私が課長の分もお取りしてきますって、言う所だった?

「中島さん」
「はい」
「気になるでしょう?」
 トントンと雨宮課長は自分の目元を指した。

 あっ! メイク直さなきゃ。

「失礼します」
 バックを持ってお手洗いに駆け込んだ。
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