雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 気づいたら泣いたまま眠っていた。
 喉が渇いて、のろのろと布団から立ち上がり、隣の八畳間にあるミニバーに飲み物を取りに行く。

 ひゃっ。誰かいる。
 襖を開けた瞬間、目に入って来たのはオレンジ色の豆電球の灯りの下に見える人の形。
 よく見ると座卓の上に突っ伏した状態で、雨宮課長が眠っている。

 何で? 課長、部屋に帰らなかったの?

 デジタル時計を見るとAM5:20と出ていた。
 もう朝。雨宮課長、一晩中ここにいたの? 私の泣き声を聞いていたの? どうして?

「中島さん、ごめん」
 座卓に突っ伏したままの課長が寝言のように言った。
「悪かった。ごめん」
 謝罪の言葉に胸がキュンとする。

「課長、起きているんですか?」
「中島さん……。うーん」
 意識はないみたい。

 そっか。課長、謝りたくて、ここにいたのか。
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