わけあり男装近衛騎士ですが、どうやら腹黒王太子の初恋を奪ってしまったようです~悪役令嬢回避のつもりが、いつの間にか外堀を埋められていた件について~
『できれば、この手を取っていただけると嬉しいのですが』
 あまりにもの衝撃に、ケイトは固まっていた。それにシュテファンも気づいたようだ。だから、今のような言葉をかけてきたのだ。
 ここまでいろんなところから圧力をかけられてしまったら、断れない。
『は、はひっ……』
 そう返事をしたのはいいが、緊張のあまり声が裏返ってしまった。
 いつもケビンの声色で低い声を出していたため、女性らしい声色にするには意識する必要もあった。
『ケビンにあなたのような美しい妹がいたとは。ケビンは何も言わないからな』
 社交辞令だとわかってはいるが、美しいの形容に顔が火照った。
 とにかくシュテファンと一曲は踊った。彼は続けて踊りたそうであったが、婚約者でもない彼とは一曲でやめておく必要がある。
 それに、無闇に敵は増やしたくない。それとなく断って、父親のもとに逃げた。
 彼は、他の女性とも幾人かは踊ったはずだ。

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