わけあり男装近衛騎士ですが、どうやら腹黒王太子の初恋を奪ってしまったようです~悪役令嬢回避のつもりが、いつの間にか外堀を埋められていた件について~
◇◆◇◆ ◇◆◇◆

「ケビン。聞いてくれ。オレはとうとう運命の女性と出会うことができた」
「左様ですか、それはおめでたいことですね。むしろ、殿下にとっては初恋ではありませんか。それで、お相手の方は?」
「よくぞ聞いてくれた。オレの運命の女性は、ケイト・トレイシー。トレイシー侯爵家のご令嬢だ」
「それって……」
「ああ、お前の妹だな、ケビン。いやお義兄様と呼ぶべきか」
 気が早い! とつっこみたくなるところを、寸でのところで堪えたのはケビンである。
 いや、ケビンに扮しているケイト。つまり、目の前の男の運命の女性と言われてしまった人物である。いや、運命の女性だけではない。ケイトが知っている限り、初恋の相手にも該当する。
 そもそも目の前にいる男はシュテファン第二王子殿下。このザハト国の未来の国王陛下となるべき資格を持つ男。
「ケイト嬢は病弱と聞いていたが……。すっかり丈夫になられたようだ……」
 ケイトを想ってうっとりとしているシュテファンの金色の髪は、窓から差し込む陽光によって、きらきらと反射していた。宝石のようにきらびやかに輝く翡翠の瞳。見た目が王子様であれば、身分もまごうごとなき王子様である。
「なあ、ケビン。ケイト嬢をお茶会に誘ってもよいだろうか」
「なぜ私に聞くのです?」
「それは、君が彼女の兄だからだ。ケイト嬢の情報をオレに売ってくれ、頼む。むしろケイト嬢をオレにくれ、頼む」
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