わけあり男装近衛騎士ですが、どうやら腹黒王太子の初恋を奪ってしまったようです~悪役令嬢回避のつもりが、いつの間にか外堀を埋められていた件について~
 それは上手くいく。侯爵とケイトの思惑通りに事は進んだ。
 それに見た目もそっくりな二人なのだ。服さえ取り換えてしまえば、どっちがどっちであるかなんて、両親以外、見分けがつかない。
 ケビンも熱を出す回数は減り、身体も次第に丈夫になっていく。時期をみて、ケビンと入れ替わればいいと、ケイト自身も思っていた。
 だが、次に立ちはだかった壁が従騎士制度であった。
 この国では十六歳になった男は、二年間従騎士として騎士団に従事せねばならない。いくら身体が丈夫になってきたケビンであるが、従騎士として仕えるには身体ができあがっていなかった。
 もちろん、病気などを理由に免除も可能であるが、そのためには証明書と多額の免除金が必要となるし、()()()には病気の既往歴はない。
『お父様、私がケビンとして従騎士になります』
 父親はまた悩んだようだが、たった二年間でありその後、ケビンと入れ替われば問題ないと、これまたケイトが力説して押し切る。
 そして、十六歳となったケイトに待っていたのは社交界デビューであった。ケイトとしてケビンに出てもらいたいところであったが、そればかりは母親が反対した。
 ケビンも病弱ということも重なって、まだ線の細い男性であり、詰め物をしてドレスを着てしまえばケイトに見えないこともなかった。
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