わけあり男装近衛騎士ですが、どうやら腹黒王太子の初恋を奪ってしまったようです~悪役令嬢回避のつもりが、いつの間にか外堀を埋められていた件について~
 それでも母親は、どうしてもケイトにデビュタントの白いドレスを着せたかったようだ。
 なんとか入れ替わりをせずに、社交界デビューを果たしたケイトであるが、その後は病弱という理由で、一切社交界に顔を出さない。幼い頃からの彼女の噂を知っている者たちは、それに納得したものだった。だが、周囲が思っているケイトとは、ケビンである。
 そしてケビンとして従騎士となったケイトだが、同期入団にあのシュテファンがいた。従騎士制度は、王族であっても課せられる制度であり、免除するには他の者と同じ条件が必要であった。
 特に身体的に何も問題のないシュテファンは、従騎士として騎士団に入団することをよしとしていた。むしろ、楽しみだったと本人は口にしていた。
 なぜかシュテファンはケビンと馬が合った。正確にはケビンに扮したケイトである。
 むしろ、シュテファンのほうからケイトにちょっかいをかけてきたのだ。あまり、他人と関わりたくなかったケイトであるが、相手がシュテファンであれば適当にあしらうことも難しい。二年だけの我慢だと思って、付き合っていた。
 二年の従騎士の任期を終えたら、父親と同じ文官を目指そうとしていた。ケビンの体調を考えると、従騎士の後も騎士として続けるのは厳しいだろう。それが理由である。
 それにもかかわらず、シュテファンはしきりに近衛騎士隊に誘ってきた。
 できれば文官となりたい。そう、シュテファンには何度も伝えたのだが、彼は断固としてそれを聞き入れてくれなかった。
< 6 / 26 >

この作品をシェア

pagetop