開けずの手紙2ーデジタルー
その4


ここで国上は、眼鏡をはずし、ティッシュでレンズの表面をふき取りながら、ぼそりぼそりという口調で続けた。
その目線は正面に座っている鷹山から外して…。

「これは私の確信に近い仮説です。鬼島はこの呪いのシステム構築の段階で、エネルギーの分散配分を巧妙に計算していたんです。新たなキャッチ・スポットが”整備”されるまでの間は、負気伝達パワーが落ちても、百夜殺しのサイクルはなんとか起動できストック配分ですよ」

「それって…。じゃあ、三浦美咲を呼び寄せ夢から引き戻し、負気エネルギーの耐用度が落ちてきてると見切った我々が、くびれ柳も排除できたのは、鬼島の次の準備が整ったから、放棄したと…。そう言うんですか、あなたは…」

鷹山はやや顔を赤らめていた。

「今回の九州を見るにつけ、それに近い結論に辿り着いてしまうんですよ、鷹山さん。どうしてもね」

「ならば、理由、根拠をお聞かせください」

国上は眼鏡をかけなおすと、両の眼を鷹山に戻した。
その眼光は鋭かった。


***


「鬼島の挑発文で、”人間の打つ手を読み、そのさらなる次も…”って記述の真義は、彼がこの世に産み落としたシステムの隠し玉は、ソフト機能としてあらかじめ装備したものではなく、呪われる側、人間たちのアクションによってそのレールが敷かれるハード機能に留めていたのだろうと…。この見解はあなたも同じですよね?」

「ええ。こちらのサイトに常時寄せられる多くの情報等から分析しても、あなたの見解とほぼ同じに行きつきました。だが、三浦美咲とくびれの掃討は鬼島の時期的想定を覆したとの断定に至っていました。国上さんは違うと言われる。さあ、そこですよ、要は」

「私はね、鬼島がどのくらいの時期にくびれ以外を機能させるられるかを、概ね見当をつけていたと見てるんです。そのキーワードが、福岡の深浦総合高校で起こった一挙数十人の大口事案です。要は、こんなケースが出る時期が来れば、くびれは用済みになると。その時期想定をね」

「ちょ、ちょっと待ってください、国上さん、そういう理屈なら、まず、三浦美咲の施術とその大口現出の時期がほぼ重なった。こっちは鬼島のエネルギー配分を読み込んで、くびれを同時消除にしたが、それは偶然で、もし大口がもっと後でであったら、我々はくびれ柳を役立たずに葬ることはできなかったってなりますよ!」

「私の結論はそうなります。もっと言えば、三浦美咲の呼び寄せ夢からの奪還もできたかどうか…」

ここで鷹山は絶句した…。





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