開けずの手紙2ーデジタルー
その3



その少女の首にはまだら膨れクヌギの枝が巻き付き、クヌギは彼女を宙高く吊り上げると、根元に叩き付けた。
何度何度も…。

”ぎゃあーー!!”

松川アイはすでに地面へ数十回叩きつけられて、瀕死寸前だった。

彼女の意識は我があばらがボキボキと折れ砕け、皮膚を破り、飛び出している感覚をリアルに捉えていた。
全身血だらけになり、顔面は晴れ上がり、右足はLの字に変形を晒していた。

”ごろして~~、いっそ、ごろして~!!”

うめき声は音となって出ることはなく、鈍くどんよりと闇に呑み込まれるのみであった。

言語の形容なき、惨さ極まる暗黒の処刑は、時間の存在しない空間で感覚としては延々と終わらない。

そして、その感覚にある言葉が響いた。
音の存在を許されない空間で…。


***


”オマエ、ダレヲ、シメイシタ”

”クメ…、タ…、ナナ…、ナナ…、ミ…”

感覚同士の会話は手短でカタが着いた。

まだら膨れクヌギによる処刑は、この自白で延々の時間を絶たれ、ここに終焉を迎えるのだった…。


***


翌日、松川アイは福岡県郊外の公園で、ベンチに座ったまま手首を切った姿で息を引き取っていた。

”松川アイ、ご愁傷様…”

ナナミは深浦総合校で一級後輩の松川アイをこの世から消えることを許した。
その自白を以って…。

無論、彼女に”道連れ”の指名は与えられない。
ナナミの直接実行対象たる呪われ手は、その自白あるまで、まだら膨れクヌギに毎夜、意識の中で殺され続ける…。
身の毛もよだつ恐ろしい拷問刑によって…。

ちなみに松川アイは3夜耐え、4夜目にして、首巻き付け地面叩きの処刑で無事、それ以上は殺されずに済んだ。






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