開けずの手紙2ーデジタルー
パンデミック・イン九州⑤



「正直、微妙なとこですよ、鷹山さん。僕には割り切ることはできても、それは自分に無理やり言い聞かせてるってことに過ぎない。それはたぶん、奈緒子さんも同じと思う。何と言っても、我々二人は鬼島の深層を垣間見てしまったんだ」

『和田さん…』

鷹山の胸中としては、”それを切り出せれては…”と言ったところであっただろう…。

「…自分の目に入らないところであろうと、我々が教えている生徒と同年代の若い命が、今も鬼島の呪いで自殺を迫られ、その際は道連れも強要されて気が狂わんばかりの苦悩に苛まれている…。悪魔の所業ですよ!そんなもんがまだ消えていなかった。その現実を無視することは苦しい…。言いようもなくつらいんですよ」

和田は鬼島への憤りが再び全身を貫き、感情あらわに鷹山へその思いをぶつけるのだった。
それを受けて、鷹山は意を決したように切り出す…。


***



『…和田さん、実はアライブのサイトには三浦さんの”術後”も、何件か当該事象の相談や情報提供は寄せられていたんです。すなわち、百夜殺しの呪いは終わっていなかったことは、あの直後にね…』

「そうですか…。まあ、鬼島の遺したあの文面からすれば、くびれ柳を”攻略”されても次の手は打ってあると薄々ではありましたが…」

『これは国上さんとも認識を一にしているが、鬼島は、くびれ柳の他にあらかじめ予備をセットしていたとは捉えていないんです』

「えっ?じゃあ…」

『うむ…。ヤツはこの世に装備した呪いのシステムで、人間の出方を予期・予測し、呪いの輪が広がることで、新たなくびれ柳を創出することを読み込んでいたとね。つまり、その土台作りまでで留めていたと…』

「!!!」

『ふう…、まあ、和田さんにここまで話せば今までの経緯があるし、伏せるには抵抗がある。どうですか?こちらでストックしてある投稿者のメール、ご覧になってみますか?今回の九州での事態を読み解くカギも見え隠れしてるんですが…』

「ぜひ、拝見させてください。ぜひ…」

かくして、北九州発の連鎖自殺パンデミック発生の一報によって、和田はまたもや鬼島則人の屈折した闇の彼方へ引き戻されることになるのだった…。






< 7 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop