開けずの手紙2ーデジタルー
悪夢甦る①


≪北九州のニュース、見ましたか?≫

≪ええ…。各局とも一通りは≫

≪これ、”例の手紙”が終わっていなかったってことなんでしょうか?≫

≪そう思います。あの柳だけで根絶はなかったと…≫

≪和田先生から連絡はありました?≫

≪今のところまだです。多分、手嶋先生か私のどちらかにはと思ってますが…≫

≪こっちにあればラインします≫

≪ええ。こちらの方に来れば私も一報入れます≫

≪はい。では、週明けに学校で…≫

土曜の夜、このラインは手嶋の方から奈緒子に届いた。


***


その夜、奈緒子の夫である直人は接待ということで、帰宅したのは11時近かった。
既に長女のリカは就寝しており、入浴を済ませた直人は缶ビールを片手にリビングでくつろいでいた。

「あなた、お酒はさんざん飲んできたんじゃないの?」

奈緒子はやや嫌みっぽい笑いを浮かべながら、一言浴びせた。

「接待じゃあ、高い酒でも味気なくてね。やっぱり、家でひとっ風呂浴びた後の一杯が最高だよ。はは…」

対して、彼女より8歳年上で40代に入った夫の直人は満面の笑みを浮かべながらホンネで返してきた。
ダイニングテーブルに向き合っている奈々子は、そんなあけっぴろげな夫がどこかおかしくて、今度はクスクスと声を出して笑っていた。


***


「…そういえばさ、1軒目のすし屋でテレビからニュースが流れてたけどさ…、九州で中高生が大規模な連鎖自殺だってな…。奈緒子が通う学校の近くじゃあ、一時、女子高生の追っかけ自殺みたいなのがはやってたよな?それが、今度は九州へ上陸ってことか…」

「…」

「…得意先の面々はみんな、全く最近の子供は何考えてんだかってあきれていたけど、これ…、いじめとかってのも関係もあるのかな?」

「うーん、それも無関係じゃないだろうけど、一概にはねえ…」

奈緒子の口からは、なんとも当たり障りのない返答がすんなりと出てしまった。

「そっちの学校も数か月前くらいは、かなりピリピリしてたんだろ?ホント、学校の先生も大変だよな。一人自殺したらその後バタバタと飛び降りだ首つりだかってんじゃあ、まるでインフルエンザの流行だもんなー」

奈緒子は夫婦間では隠し事をせず、何でも話し合うことを心がけていたが、鬼島の呪い云々に関しては、夫に一切話していなかった。
当然ながら…。

”一か月半前にこの件は終わったっと思っていたのに…”

奈緒子は、言い知れぬ苛立ちと腹立たしさが沸々を湧き上がるのを抑えることができなかった…。
そして、そのあと間もなく和田からラインが届く…。





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