【短編集】片想い、余命2日
 俺はというと、自覚したばかりだからか、由依の顔をまともに見ることもできず、俺は視線を落とす。


 そして、由依も花村も、俺も。

 誰もなにも言わなくて、空気が重くなる。


 長い沈黙の中で、俺は必要かわからないけど、由依に説明できるように、さっきの花村と話した内容を整理していく。


 だが、俺から言えることはないと、すぐにわかった。


 そして、一つ、気になることが見つかった。


 どうして、由依は俺といるとつらいと感じるのか。


 俺の中である仮説が立てられたが、それを今確認すべきではないのは、明らかだった。

 ましてや、都合のいい妄想であるような気もして、確かめる勇気もなかった。


 そんな静寂の中、床が擦れる音がした。


 顔を上げると、由依が花村に近付いていた。


 気まずさからか、花村は俯いて動かない。


 それでも、由依は花村の視界に入るように、しゃがみ込んだ。


「深優、帰ろう?」


 花村の横顔が、泣きそうになっている。


 花村が頷くと、由依は立ち上がる。

 そして俺と目が合い、視線を泳がせる。


 だが、由依は逃げなかった。


「またね、壱」


 まだ、歪な笑顔。


 でも、話しかけてくれて安心した。
< 11 / 39 >

この作品をシェア

pagetop