【短編集】片想い、余命2日
でも、壱が困ろうがどう思おうが、今は気にしていられない。
なけなしの勇気が萎んでしまう前に、言い切りたい。
「私の初恋ね、壱だったんだよ」
壱は固まっている。
迷惑そうには見えないから、少しだけ安心する。
「ばいばい、壱」
これ以上、困惑している壱を見ていたくなくて、私はその場から逃げ出した。
校舎を駆け足に出ると、深優の背中を見つけた。
声もかけずに深優の背中に抱きついたから、深優は悲鳴を上げる。
「由依……?」
深優の顔を見ると泣いてしまいそうで、深優の背中に顔を埋める。
すると、深優の暖かい手が、頭に置かれた。
「どうしたの?」
「……壱に、言っちゃった」
声が震えていた。
緊張の糸が今さら切れて、思いが溢れる。
十年の長い片想いに区切りがついて安心しているのか、こんな終止符で悲しんでいるのかはわからなかった。
とにかく、自分でも理解できない涙を、声を殺して流し続けていた。
◆
翌朝、私の目は思っていたよりも腫れなかった。
深優が必死に手当してくれたおかげだろう。
思う存分泣いたこともあって、気持ちは軽かった。
なけなしの勇気が萎んでしまう前に、言い切りたい。
「私の初恋ね、壱だったんだよ」
壱は固まっている。
迷惑そうには見えないから、少しだけ安心する。
「ばいばい、壱」
これ以上、困惑している壱を見ていたくなくて、私はその場から逃げ出した。
校舎を駆け足に出ると、深優の背中を見つけた。
声もかけずに深優の背中に抱きついたから、深優は悲鳴を上げる。
「由依……?」
深優の顔を見ると泣いてしまいそうで、深優の背中に顔を埋める。
すると、深優の暖かい手が、頭に置かれた。
「どうしたの?」
「……壱に、言っちゃった」
声が震えていた。
緊張の糸が今さら切れて、思いが溢れる。
十年の長い片想いに区切りがついて安心しているのか、こんな終止符で悲しんでいるのかはわからなかった。
とにかく、自分でも理解できない涙を、声を殺して流し続けていた。
◆
翌朝、私の目は思っていたよりも腫れなかった。
深優が必死に手当してくれたおかげだろう。
思う存分泣いたこともあって、気持ちは軽かった。