【短編集】片想い、余命2日
 壱に言われて、私はとんでもなく矛盾したことを言ってしまったのだと思った。


 こんなにも自分が面倒なタイプだとは、知らなかった。


「まあいいや。ひとまず、俺の思ったことを言うわ」


 壱は足を止め、振り向いた。


 壱の視線がゆっくりと上がって、私を捉える。


 これほどしんけんな真剣な壱を見たのは、いつぶりだろう。


「俺は、過去の話じゃなかったらいいのにって思ったよ」


 壱の言葉を理解するまで、少し時間がかかった。


「え……と……なんで……」


 それを言うのが精一杯だった。


「俺が、由依のこと好きだから」


『そんな冗談、言わないで』


 そうやって笑い返すには真剣すぎて。


『今までいろんな人と付き合ってきておいて、勝手すぎるよ』


 そうやって当たってしまうと、自分を嫌いになってしまいそうで。


 私はただ、困ったように黙ることしかできなかった。


「ごめん。どの口が言ってんだって話だよな」


 背中を向けられる間際に見えた壱の横顔は、切なそうだ。


 嫉妬で胸が苦しむのには慣れてしまったけど、私が理由で壱が悲しんでいるところを見て、同じように、もしくはそれ以上に胸が痛かった。
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