【短編集】片想い、余命2日
「わかった、行こう?」


 由依が受け入れてくれて、笑いかけてくれる。

 この幸せに浸り続けたいと、そんなことを思った。


「ねえ由依……俺の話、聞いてくれる?」


 先を歩く、由依の背中に聞く。


 由依にはっきりと『話はない』と言われ、逃げられたことがトラウマになっているようで、逃げ腰で聞いてしまった。


 由依が絡むとこんなにもカッコ悪くなるなんて、知らなかった。


「……なに?」


 由依はなにを言われるのかなんとなく察しているのかもしれない。

 その声は、聞きたくないと言っているようだった。


「俺はやっぱり、由依が大事だし、失いたくないし、できるならずっとそばにいてほしい」


 すると、由依の小さな笑い声が聞こえた。


「すごく傲慢」


 それだけ好きなんだ。


 そう言いたかったけど、『好き』と言えば逃げられる気がした。


「……本当に、私でいいの?」


 由依はどうやら、俺が『好き』と言いたいことがわかっていたらしい。


「由依が、いい。もう間違えない。俺の大切な人は、由依だ」


 由依にちゃんと伝わってほしくて、由依の隣に立つ。


 俺を見上げる由依は、少しだけ頬を赤く染めている。


「明日、答えてもいい?」
「もちろん」


 そして俺たちは、第三教室で一緒に昼を食べた。
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