【短編集】片想い、余命2日
アイドルの片想い
1
その日、校内は浮かれていた。
そんな中、一年二組に一人、その理由を知らないどころか興味すらない女子がいた。
「ちょっと亜子、人の話、聞いてた?」
佐野綾芽は、百面相をしながらレシピ本を読む、片倉亜子を呼ぶ。
亜子はレシピ本から視線を上げた。
「どうしましょう、綾芽ちゃん。どのお菓子も美味しそうです」
それは聞いていなかったと言っているようなもの。
綾芽は亜子の両頬をつねる。
「やっぱり聞いてないじゃない」
「痛いですよ、綾芽ちゃん。そんなに怒ってどうしたのです。クッキー食べますか? 落ち着きますよ」
綾芽は手を離し、亜子から手作りのクッキーを受け取る。
席に着くと、包装を解き始める。
「まったく……亜子は、芸能人とか興味ないわけ?」
「ないですねえ。テレビを見るより、お菓子を作る方が何倍も楽しいです」
どう見ても本心で、綾芽はそれ以上は言わなかった。
三枚ほどしかなかったクッキーは、あっという間になくなる。
綾芽は空になった透明の袋を丁寧に折っていく。
「まあ、亜子の近くには芸能人並みのイケメンがいるし、余計興味ないか」
亜子は首を傾げる。
「壱先輩だよ。亜子のお兄ちゃんなんでしょ?」
壱の名を聞くと、亜子の表情が曇る。
そんな中、一年二組に一人、その理由を知らないどころか興味すらない女子がいた。
「ちょっと亜子、人の話、聞いてた?」
佐野綾芽は、百面相をしながらレシピ本を読む、片倉亜子を呼ぶ。
亜子はレシピ本から視線を上げた。
「どうしましょう、綾芽ちゃん。どのお菓子も美味しそうです」
それは聞いていなかったと言っているようなもの。
綾芽は亜子の両頬をつねる。
「やっぱり聞いてないじゃない」
「痛いですよ、綾芽ちゃん。そんなに怒ってどうしたのです。クッキー食べますか? 落ち着きますよ」
綾芽は手を離し、亜子から手作りのクッキーを受け取る。
席に着くと、包装を解き始める。
「まったく……亜子は、芸能人とか興味ないわけ?」
「ないですねえ。テレビを見るより、お菓子を作る方が何倍も楽しいです」
どう見ても本心で、綾芽はそれ以上は言わなかった。
三枚ほどしかなかったクッキーは、あっという間になくなる。
綾芽は空になった透明の袋を丁寧に折っていく。
「まあ、亜子の近くには芸能人並みのイケメンがいるし、余計興味ないか」
亜子は首を傾げる。
「壱先輩だよ。亜子のお兄ちゃんなんでしょ?」
壱の名を聞くと、亜子の表情が曇る。