【短編集】片想い、余命2日



「今日から三日間、近くの学校でミュージックビデオを撮影するわけだが。アイドルとして、一般人との距離感は守るように。内緒の恋が盛り上がるとか言うなよ、颯斗」


 車を運転する男性マネージャーは、厳しめに言う。


「あれ、名指し? ちょっと酷くない? 島崎ちゃん」


 立花颯斗は不満溢れる声で言い返す。


 長めの黒髪に泣きぼくろ。

 性格も相まって、颯斗はセクシー担当なんて言われているメンバーだ。


 可愛い女の子に目がないのは、世間には言えない秘密。


「それはそうでしょう。僕も洸も、きちんと理解してますから」


 そう言うのは、黒縁メガネをかけた真面目そうな男、星河秋良。


 アイドルをやりそうにない風貌ではあるが、それなりに応援の声が届くようになってから、活動に前向きになり始めたばかりのメンバーだ。


「洸、ちゃんと聞いてるか?」


 島崎が呼びかけたのは、Sparkleの最後のメンバー、冬瀬洸。

 グループの最年少で、少しぼんやりとしているところがあるが、そこがいいと人気がある。


「恋愛禁止、でしょ。でも僕、恋愛とかよくわからないし……颯斗くんだけ注意しておいたら?」


 見た目に似合わない毒舌もまた、世間に言えない秘密の一つだ。


「洸みたいな奴が、意外と嵌るんだよなあ」


 颯斗は楽しそうに言うが、その意味がよくわからなかった洸は、首を傾げるだけだった。
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