【短編集】片想い、余命2日
「注意されたこと。もう忘れたんですか」
「ごめん、ごめん」


 笑って謝る颯斗に対し、秋良はため息をつく。


 亜子はそんな二人の顔を交互に見る。


「二人とも、彼女、困ってる」


 洸が言うと、秋良は咳払いをした。


「今回、我々の楽曲のテーマが青春、そして恋愛なのです。そこで、実際の高校生カップルをムービーにしようということになったのですが」


 秋良は亜子から壱と由依に視線を移す。


「……さすがに、カメラの前で普段通りにっていうのは、その……」


 由依は続きを引き継ぎながらも、言い淀んだ。


 しかし言わなくとも、その考えは伝わってくる。


「別のカップルさんを連れてきたら、解決できないです?」
「向こうは俺を使いたいんだと」


 壱のドヤ顔に、亜子は嫌悪感を抱く。


「うちの社長が彼の見た目をすごく気に入ったみたいで……それに、今から探すと、きっと大騒ぎになってしまいます」


 秋良の懸念することは理解できるが、どうしてもやりたくないという思いが強かった。


 亜子は断るための言葉を探す。


「……兄妹で恋人の真似ごとなんて、私はしたくないです」
「それは俺も嫌だよ。でも、由依以外の女との映像が残るのは、もっと嫌」
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