【短編集】片想い、余命2日
◇
撮影の休憩中、亜子は洸の姿を探して、校内を歩く。
その手には、昨日の夜に作ったクッキーがある。
もともと、渡すつもりなんてなかったけれど、話すきっかけになるかもしれないと思って、亜子は渡したくなったのだ。
「ねえ」
すると背後から誰かに呼び止められた。
振り向くと、複数人の女子が亜子を睨みつけている。
「どうして片倉さんが、洸の相手役なわけ?」
「壱先輩とその彼女がミュージックビデオに出るはずだったのに」
「壱先輩の妹だから、わがまま言ったとか?」
「ねえ、ズルくない?」
亜子が口を挟む隙を与えてくれなかった。
亜子は反論することもできず、ただ戸惑う。
そのおどおどとした態度が、彼女たちに火をつけてしまう。
亜子への憎悪が、止まらなくなる。
「……それ、洸に渡すつもり?」
一人が、亜子のクッキーに気付いた。
亜子は背に隠すけど、無意味で、取り上げられてしまった。
「返してください」
亜子が手を伸ばすが、当然、亜子の手には戻ってこない。
「こんなので洸の気を引こうとか、本当、最低」
女子の手から、クッキーが落ちる。
それだけで割れてしまったのに、容赦なく、クッキーは踏み潰された。
撮影の休憩中、亜子は洸の姿を探して、校内を歩く。
その手には、昨日の夜に作ったクッキーがある。
もともと、渡すつもりなんてなかったけれど、話すきっかけになるかもしれないと思って、亜子は渡したくなったのだ。
「ねえ」
すると背後から誰かに呼び止められた。
振り向くと、複数人の女子が亜子を睨みつけている。
「どうして片倉さんが、洸の相手役なわけ?」
「壱先輩とその彼女がミュージックビデオに出るはずだったのに」
「壱先輩の妹だから、わがまま言ったとか?」
「ねえ、ズルくない?」
亜子が口を挟む隙を与えてくれなかった。
亜子は反論することもできず、ただ戸惑う。
そのおどおどとした態度が、彼女たちに火をつけてしまう。
亜子への憎悪が、止まらなくなる。
「……それ、洸に渡すつもり?」
一人が、亜子のクッキーに気付いた。
亜子は背に隠すけど、無意味で、取り上げられてしまった。
「返してください」
亜子が手を伸ばすが、当然、亜子の手には戻ってこない。
「こんなので洸の気を引こうとか、本当、最低」
女子の手から、クッキーが落ちる。
それだけで割れてしまったのに、容赦なく、クッキーは踏み潰された。